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個人の趣味のブログです、ご了承下さい。 ときめきメモリアルGSシリーズ二次創作ブログですが、版権元などとは一切関係ありません。
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第四話



 灰色した空から、さーっと降り注ぐ雨に、カノコはため息を吐く。

 今日は琉夏との映画デート。せっかく下ろしたてのスカートを身に着けてきたのに、朝の天気予報が無情に外れてしまったからだ。

 彼との待ち合わせをしているカフェまであと少しというところで、濡れる事を気にせず進める雨量を越えてしまった。咄嗟に軒を借りたのは本屋のビルで、邪魔にならないよう隅っこに雨宿りをさせてもらったものの、雨足は一向に弱まらない。

 仕方なく琉夏に、少し待ち合わせに遅れる旨をメールすると、無駄な出費と思いつつビニール傘を買うことにふんぎり、近くのコンビニまでダッシュしようとした。
「遅い」
と、でかかった足に声がかかり、蹈鞴を踏む。頭だけ軒を出て二、三滴頭を濡らしてしまった。
「え?」
 呼び止められたのかと振り返れば、同じく雨宿りをしていた男性が、女性に対して非難めいたことを口にしていた。
「待たせるとはいい度胸だ」
「雨の中迎えに来たのに…」
 相手は女性で傘を二本手にしているところを見ると、眉間に皺を寄せて怒るこの男性を迎えに来たようだ。
 よく見ると二人とも美男美女で、カノコは傘を買いに走るのも忘れマジマジ観察しつつ、カップルかなと推察する。

「遅れたから、驕りナシな」
「え~。それならこのまま傘持って帰ろうかな…」
「コラコラ、帰るな」
「いたーい。チョップやめてよ。就活中の大切な脳なのに、細胞減るでしょ」
「もう死滅してるんじゃないのか?さっきから軽い音ばっかしてるぞ」
「ひどいっそれは瑛くんがチョップばっかするからだよ、責任取ってよね」
 それまで黙ってカップルのやり取りを聞いていたカノコはここで噴出してしまう。

 ああいえばここいう。

 ポンポンと言葉が飛び交ってまるで漫才のようだと思ってしまったのだ。

 どちらかというとぼんやりなカノコと、どこか明後日にとぼけている琉夏ではこうはいかない。

 赤の他人に失礼だと思いつつ、耐えられずクスクスと笑うカノコに、カップルも気付いて、互いに頬を赤らめていた。
「みろ、笑われただろう」
「チョップするからだよ」
 肘でつつき合いながら決まり悪げにする様も、なんだか二人そろって可愛くて、笑いが止まらない。
「すっすみません、わらったりして」
 堪えてなんとかそういう。
「あ、いえ…御見苦しいものを…」
「騒がしいですよね、すみません…」
「いえいえ。仲いいんですね」
「そんな、全然」
 女性のほうがあわてて両手を振る。
「あ~…雨止みませんね。雨宿りですか?」
 男性は気恥ずかしいのか、話題を逸らした。
「止みそうにないですね。これ以上待ってても無駄かな」
 カノコも拘らず、未だ雫を激しく降らせる雨雲を仰いだ。
「…あ、良かったら傘、使ってください」
と、女性のほうがいままで自分が使っていただろう渋朱色の傘を差し出す。
「ええ?そんなつもりじゃ…いいです、いいです」
 あわてるカノコに、女性は朗らかな笑みを浮かべ、もう片手に下げていた、濃いブルーの傘を見せる。
「いいの、いいの。彼の傘あるし、こっち大きいから二人で入れるよね」
 そう男性を見上げると、彼も柔らかな笑みを見せた。
「そうだな。まあコイツ多少濡れたって風邪引かないおバカなんで、気にせずそれ持ってってください」
「バカってなによ」
「間違いじゃないだろ」
「ああっあのっそんな…、こんな素敵な傘、お返し出来ないの心苦しいですし」
 持ち手を籠目にしてあるその傘は、本当に洒落ていて、女性も本当にファッションに気を使っているのが判る。
「あーそんな高いものじゃないけど……そだ、貴方この通りの一つ向こうの通りにある『アルカード』って喫茶店わかるかな?」
「え…あ、はい」
 判るも何も、琉夏が最近増やしたバイト先の一つだ。
「彼、そこでバイトしてるの」
「ああ、そっか。うん、傘そこに持って来ればいいよ。『佐伯の預かり物』だって言えば、俺居ない時でも預かって貰える様にしとくよ」
「ええっでも」
 勝手に話を進めていくカップルに、カノコはただ恐縮した。
「いいの、いいの。貴方これからデートでしょ?」
「え?」
「そのショール、シモンでこの間出したばかりの新作でしょ?」
「わ…判ります?」
 かーっと頬に熱が集まる。
「かわいい、貴方にすごく似合ってる。彼待ってるんでしょ?せっかくお洒落してるのに、濡らしちゃうの勿体無いわ」
 ニコリと微笑み、手に傘を握らされる。
「傘、いつでもいいから」
「…ありがとうございます…」
 ここまで言われては、甘えてしまうしかない。傘を受け取ると、瑛と呼ばれた男性がもう一本の傘を、ポンと開いた。
「行くぞ」
「ちょっと待ってよ!」
 女性はカノコに軽く手を振ると、軒先を出て行く背を追って出て行った。
「ありがとうございました!」
 二人に向かって大きくそう告げると、青い傘が左右に少し揺れた。女性が男性のシャツの背を掴み、身体を寄せ合って一つの傘で二人街中に消えていく。


 カノコはしばらく二人の背を見送ると、貸してもらった傘を差して、本屋の軒を出た。


 先ほどまでの憂鬱な気分が、軽くなっていた。

 まだ付き合い始めたばかりの自分たちも、あんな素敵なカップルになれるだろうか?

 今はただ、早く琉夏に会いたくなった。

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