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個人の趣味のブログです、ご了承下さい。 ときめきメモリアルGSシリーズ二次創作ブログですが、版権元などとは一切関係ありません。
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女性陣のターン。

第三話

 途切れてしまったケータイの、虚しい不通音を聞きながら、海野あかりは小さくため息を零した。

 薄暗い建物と建物の間で、ケータイのバックライトに照らされたあかりは、薄化粧とはいえチャームポイントの少し人より厚い唇をグロスが魅惑的に照らし、丁寧に上げた睫に重ねたマスカラが個性ある潤みがちの瞳を印象的に仕上げた美女だったが、その表情を暗く曇らせていた。

 瑛と付き合い始めてもう五年目、途中何度も喧嘩がヒートアップして別れたり、寄りを戻したりを繰り返した。
 今までだったら、こんなつれない彼の態度に怒って、しばらく着キョ(着信拒否)して、回りに呆れられて、それでも逢いたくなって、どちらからか会いに行き、素直じゃないお互いの言葉に二人で謝って仲直りをした。

「アンタら、そうやってケンカする度に、仲直りのセックスが燃えるから、しょっちゅうケンカしてるのとちゃう?」

と、高校時代からの友人に指摘されて、猛反発したが実際そういう依存症があるらしいと知って、二人で反省したのが、なんだか随分昔に思えた。




 最近

 大学を卒業してから、彼とはずっとギクシャクしている。

 いや、もう少し前からか…。瑛の就職が内定したのに、あかりは何社受けても不採用通知ばかりが届いた。もちろん就職氷河期のこの時代、瑛の様に希望通りの職種に就職できる事のほうが稀で、あかりは希望していた出版関係が全滅しており、他の職種に手を出すべきか迷っている間に、卒業を迎えてしまい、学生時代からのバイト先に居座ったまま、未だ職探し中の身、つまりフリーター状態だった。

 高校生の頃から、自分の夢にまい進する佐伯瑛のすごさを思い知らされる。

 頑張る彼を支えたいと思う自分は、未だフラフラとしている結果に、歯噛みせずにはいられない。

 上手くいかない就活についての悩みを瑛に聞いてもらいたいが、彼だって社会人なり立てで、相変わらずカフェ修行も兼任している。肉体的にも精神的にもクタクタになっているのに、甘ったれたフリーターの悩みを聞かせるなんて、おこがましいと感じるのだった。
 四月の初めの頃は疲れて帰る一人暮らしの彼に、食事の用意をしたり、部屋の掃除なんかを代わりにしていたが、「オレの事はいいから、お前はちゃんと就活してろ」と咎められてしまった。

 それでは疲れている彼に会いに行くことを控えていたら、とたん、逢える日が激減した。

(三週間ぶりに逢える…ハズだったのにな……)

 ケータイを閉じながら再びため息を吐く。
 残念に思う気持ちと、嫌な劣等感を彼にぶつけずに済んだ事にホッとする気持ちが、あかりの心をぐるぐると混ぜ込み苛む。

「海野さん、もう撮影していいって」
 背中から声をかけられハッとする。
「すみません、今行きます」
 あわてて駆け寄るあかりに、相手はすまなそうな顔をする。
「ごめんね、金曜の夜は彼とデートだったんじゃない?」
「あはは、だいじょうぶです、終わってから彼んち行きますから」
 あら、惚気られたと肩を竦めるのは、あかりのバイト先、地元のタウン誌を発行している小さな出版社の平原という女性社員さんだ。小柄ではあるがはばたき市を一日中ネタ探しに駆けずり回るバイタリティーをあかりは尊敬していた。

 今日は雑貨屋で明日から行われる手芸展の取材で、人手がいるというのでバイトのあかりが借り出されたのだ。
「海野さん、こちらが手芸展の主催者の方よ」
 紹介されたのは、はばたき市でも有名な雑貨屋シモンを経営している店主だった。正確にはシモンは、はばたき市が輩出した世界的デザイナー花椿吾郎が経営しているので、紹介された40代くらいの品の良い女性は雇われ店主ということになる。
 あかりはペコリと頭を下げ挨拶を交わすと、持ち込んでカメラなどで撮影を始めた。小さな出版社のタウン誌だ。色々な作業や雑用を平原とあかりは二人で兼務していた。記者にカメラマン、簡単な照明の設置、時にはモデルなんかもしなくばならない。店主が平原に簡単なインタビューを受けている間に、展示されている小物を次々撮影していく。カメラに関しては素人のあかりだが、二年ほどこのバイトをしているおかげで、雑誌に載せられる程度の写真の腕は持っていた。

『あかりが撮った写真はオレ判るようになった』

 ふいに、いつだか瑛がそう言った言葉が蘇えり、思わず手を止める。ちょっと照れくさそうに、けれど誇らしげに言われて、とても嬉しくて、こういう出版社の仕事に携わりたくなったのだ。

 だからどうしても職種を変更出来なかった。したくなかった。

 瑛のように、夢に真っ直ぐ進みたかったのに…。

「どうかされましたか?」
「え?」
 ぼんやりしているあかりの背に、声が掛けられた。
「すみません、あの、このチャーム付きの鞄可愛いなって…」
 いくらバイトとはいえ、私情に駆られて気が抜けているなんてありえない。あかかりは誤魔化すみたいに正面にあった展示物を指して振り向いた。
 そこにはこの店の店主ではない20代くらいの女性が立っていた。大きな瞳と、薄く紅も引いていないようなのに薄紅色した唇の口角をクッと上げて、初対面なのにとても好感の持てる笑顔で、あかりの様子を窺う。
「ありがとうございます、その鞄私の作品なんです」
「え!ま…本当ですか?すごい!」
 咄嗟に言い繕ってみたが、その鞄を見直すと本当に可愛い仕上がりの布バックだった。サイドポケットについたクローバーモチーフのチャームがさらに可愛さを演出していて、思わずいくら位だろうと、真剣に欲しくなってくる。
「すごいってわけじゃないですけど、目の前でそんな風に言われると嬉しいな」
 照れたように顔を綻ばせる女性に、あかりも首をフルフル降った。
「いやいや、すごいですよ。他にもあるんですか?コレだけ?」
 展示についているプレートを確認する。値段も手ごろだ。展示前の取材に来ていて取り置きは出来ないのだろうかと交渉したくなってきた。
「いくつかありますよ。お時間有るようでしたら見てってください。プレートに『K.M』って端っこに書いてあるのが私のです」
「KM?」
「小波美奈子、私のイニシャルです」
 小波美奈子はそう名乗りながら、展示物にチャームを指先で愛しそうに撫でて見せたのだった。


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